HAPPY BIRTHDAY TO ME

 以下の文章は渡辺が高校のアンオフィシャルサイトに連載していたコラムから、一部修正の上で転載しました。


 1999年2月の終わり頃、3月1日をもってついに20になってしまう私は、折角だからその日を誕生日じゃないとできないようなことをして過ごしたいと考えていた。そしてそんな私の頭をよぎったのが、以前皆で渋谷のアンナミラーズに行った時に仕入れた「誕生日の人を店員全員でハッピーバースデーを歌って祝ってくれる」というサービスであった。他に特に誕生日サービスのある店を知らなかったこともあり、数奇者心有る友人を誘ってアンミラで誕生会めいたものをやることにしたのである。正直な話、どうも私はフェチと言う程ではないものの、ウェイトレスやメイドさんなどを好む傾向があるらしく、最近特にそれが顕在化しているのだった。この誕生会の1週間前の月曜日にも、線地・45期縁日班長・墨東公安委員会・たんびといったメンツと麻雀をしたのだが、その後車で馬車道ブロンズパロットとファミレスをハシゴしていたのだった。

 まずは参加者集めである。当然ファミレスハシゴ組には声をかける。このうちたんびはテストが間近ということもあり、今回はパスであった。元々そっち方面に造詣の深いえいあうは残念ながらスケジュールがつかないということでパス。以前一緒に目黒のアンミラに行った事もあるぽん吉もやはりバイトが入っているとのことで結局不参加。闇駒責任者にも声をかけたのだが、こちらもどうも都合が悪いらしく、パスであった。まあ、当日はかなりこっぱずかしい事態になっていたので、うかつに来られて証拠写真をデジカメで撮られて掲載されたりしなくてよかったとも言えるのだが。当日までにOKを貰えたのは最初の3人と龍王、ヘリトンボの5名。本当は猫一号と暁の渡り鳥も誘いたいところだったが、時期が時期だけに(当時彼らは受験中)、電話ができなかった。

 当日は5時に目黒駅集合ということになった。なぜ目黒かと言うと、縁日班長が目黒のアンミラは質が高いと言っていたからである。何のかはあえて言うまい。この日はそこへ行く前に班長・線地と共に秋葉原でPCを見て廻った。結局この日は何も買わず、次の日に出直してパーツを買い、班長に組んでもらったのだが。その組んでもらったPCでこの原稿も作成している。それはさておき秋葉原を徘徊中にPHSに電話があり、何と渡り鳥からであった。そこで急遽渡り鳥の参加が決定。また彼から猫一号に連絡してくれるとのことだったが、こちらはどうも捕まらなかったようだった。そんなわけで、目黒駅には私を含め7名が集結した。この時私はヘリトンボにあげるため岩男潤子のポスターを持ってきていたのだが、渡り鳥もポスターをヘリにあげていたので、彼はポスターの筒を2本カバンに差した状態で歩くことを余儀なくされ、そのことに難色を示していた。

 いよいよアンミラへ。店内に客は少なかったが、それでも数人はいた。しかしここで大きな誤算があった。渋谷のアンミラではどこかにその誕生日のサービスのことが書いてあったはずなのだが、ここではそれが見当たらなかったのだ。もしかしてここではそのサービスがないのだろうか?そんな不安を抱きつつも席につく。奥の方の座席で、私の席は上座と言うか、壁際の一番奥で、4人3人なので私の前には人が座らない形になった。これは線地らの配慮であった(ようするに、よくウェイトレスさんが見られる状況にしてくれたわけ)。早速ウェイトレスが注文を取りに来た。この店はコーヒーおかわりOKなのだが、私はコーヒーが飲めないので、パイを1切れ頼んだだけだった。ので、「おいおい」と周りからツッコまれたりもした

 しばらくは皆で歓談していたが、私はあせっていた。周りからも「何かやるんじゃなかったの?」と言われるが、何しろ私は祝ってもらう立場、自分から店員さんに誕生日のお祝いについて質問するのはさすがに気が引けると言うものである。線地と「どうしようかと」相談するも埒が開かない。「どうせ後で恥ずかしい思いするのは私だから」といって店員さんに尋ねてくるよう頼むも拒否され、テーブルにあった紙に書いてあった電話番号にトイレからPHSで電話をかけるもフリーダイヤルはPHSからはかけられないというオチがつく始末。そんな時、うじうじやっている私に業を煮やしたのか、班長がレジのあたりからチラシを取ってきてくれた。このチラシには、


春はパーティーの季節です。
歓送迎会・謝恩会・同窓会・結婚披露宴二次会・お誕生日会etc.に
アンナミラーズをお気軽にご予約下さい。
 

と書かれていた。また下の方には、


お誕生日には、バースデーセレモニー、アイスクリームとキャンドルを
サービス。バースデーデコレーションパイのご予約も別途承ります。
お子様のお誕生日パーティー大歓迎!
 

とあり、これらは渋谷のアンミラで見た情報とどうも違うようなので、「予約しとかないとダメなんじゃないのか?」「てゆーかこれって子供向けなんじゃないの?」とますます悩んでしまった。

 チラシにはアンミラ各店の電話番号も掲載されていたので、席からこっそり今いる目黒のアンミラに電話してみた。しかし話し中。店に入ってからかなり時間も経ち、皆もだんだんだれてきているようだった。このままではただアンミラに来たのと変わりなくなってしまうこのままではいけない!
 そして私は意を決し、ウェイトレスさんに声をかけた(以下の会話は内容は大体間違っていないはずだけど実際に話したのとは違ってる)。

「あの、誕生日の人にはサービスがあるって聞いたんですけど・・・」
「はい。キャンドルとアイスクリームのサービスと、スタッフ全員でハッピーバースデーを歌うサービスがあります
「それって予約が必要なんでしょうか?」
「いえ、大丈夫ですよ
「じゃそれお願いします」
「本日お誕生日の方に限りますけど・・・」
「はい、今日が誕生日なんで
「少々お待ち下さい」

 ウェイトレスさんは引っ込んでいって、少しして戻ってくるとカードを裏向きに差し出した
「これに誕生日の方の名前を書いてください」
 私が名前を書いて渡すと、それを持ってまた奥に引っ込んでいった。この一連の流れの間に、龍王はトイレに席を立っていた。

 そしていよいよセレモニーが始まった。キャンドルとアイスクリームが運ばれ店のスタッフ全員が我々のテーブルの周りに集結した
「それでは、渡辺順一さんのお誕生日を祝って、スタッフ一同ハッピーバースデーを歌わせていただきます!」
(まあ、大体こんな感じのことをウェイトレスさんが言っていた)
HAPPY BIRTHDAY TO YOU、
HAPPY BIRTHDAY TO YOU、
HAPPY BIRTHDAY DEAR 順一さん、
HAPPY BIRTHDAY TO YOU・・・

でもって拍手をもらって、セレモニー終了。さっき名前を書いたカードを渡されて、「次回お使い下さい」とのこと。どうやら食べ物か飲み物を頼んだときにパイをサービスしてくれる券らしい。有効期限のところに青木と印が押してあったのがだが。

 と実際に上で書いただけのことなら「ああよかったね、おめでとう」で済むのだが、実際には色々あったのである。まずアイスクリームだが、バニラとチョコとストロベリーの3色で、味はなかなか。そして・・・バースデーメッセージを書いたチョコレートが乗っていた。これを見るとどうにもチラシの「お子様の〜」という部分が引っかかるのだった。そして全員集合したスタッフだが、総勢5名。その内、男3名。どうりでウェイトレスさんを2人しか見かけなかったわけだ。そしてその男性店員のうちの一人は、明らかに祝っているというより仕方なさそうに、「何考えてんだこいつ」といった臭いを感じさせながら歌っていた。やはり、これは子供が対象なのではという疑念が頭から離れず、非常にこっぱずかしかった。そして先程トイレに立った龍王、用を足すのに十分時間はあったし、セレモニーまでには戻ってくるだろうと思っていたら、最後まで出てこなかった。全てが終わってから彼は出てきた「逃げたな」の声も飛ぶというものである。彼はトイレのところから様子を見ていたらしく「笑えた」とのたまっていた。

 この後も渋谷に出てラーメンを食べたり色々やってはいるのだが、ことさら書くほどの事もないのでこれで終わりとさせていただく。とりあえず、もうアンミラで私は誕生日を祝ってもらうことはすまい。他の人が祝ってもらうのにはついていくけど。ちなみに、誕生日を証明するようなものの提示は求められなかったので、やろうと思えばいつでも誕生日を偽って祝ってもらうことができると思う(この時はたまたま求められませんでしたが、他の店舗で後日行った時には提示を求められたこともあるので、避けた方が良いでしょう)。試してみたい人はどうぞ。

 (本文中の文字修飾は闇駒責任者によるものです)

(文責:渡辺順一)
(初出:「独白」 闇駒


 恐らくはこれを機に、渡辺はこんなページを作ってしまう程転がり落ちていったのだと思われます(笑)。

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