ウェイトレスさんも熱く語ろう!


その5
民由合併特別特集?
アンミラ駒沢公園店を祭る文

 歳は癸未に在り九月某日、金風淅瀝として露白く天高きの時、一星忽焉として墜ちて声あり、嗚呼アンミラ駒沢公園店死す矣、而して其光栄ある歴史ハ全く抹殺されぬ……。

 さて、小泉第2次改造内閣発足、民由合併と政治の世界が何かと騒がしいこの9月、我々のもとに一つの訃報が届いた。アンミラ駒沢公園店が本年9月28日をもっって閉店するというのである。本サイトを熟読している読者諸兄は先刻御存知のことと思われるが、アンミラ駒沢公園店といえば、去る2000年は3月に渡辺順一一行が同氏の誕生パーティを敢行しようとした(未遂に終わったものの)店であり、その4ヶ月後には墨東公安委員会・たんび両氏が突撃取材を行った店である。本サイトとの因縁は浅からぬものがあるのである。その駒沢公園店の閉店となればこれは行くしかない。幹事の渡辺氏が声を掛けるとその指には3人、4人と駒沢公園店の死を悼む同志が集まり、今回の同店訪問となったわけである。

 アンミラ駒沢公園店を詳しく知らない読者のために簡単な横顔を紹介しておこう。アンミラ駒沢公園店は田園都市線駒沢大学駅から徒歩約20分、駒沢公園に面した駒沢通り沿いにある店である。交通の便は至極悪いものの、隣りには「青いアンミラ」との異称を持つあの神戸屋レストランが建ち、他に類を見ない「アンミラ・神戸屋2店ハシゴ」が可能な立地なのである。ここまでくればこれはもう至福の極みである。それだけに今回の閉店は悔やんでも悔やみきれない。まさにこれは国家的損失であろう。就任したばかりの中川経産大臣に公開質問状を叩きつけたい限りである。某銀行にカネを注ぎ込んでいる暇があるならアンミラを経営する井村屋に公的資金を投入して欲しいものだ。
 愚痴ばかりこぼしていても仕方がないので筆を進める。今回この歴史的瞬間の証人となったのは筆者を含めて総勢5名。墨東公安委員会たんび猫一号渡辺順一、そして私こと仙地面太郎である(敬称略)。このメンツを見てピンと来た方は鋭い。何を隠そうこの5人こそ謎の電波サークル「原辰徳前監督」の構成メンバーなのである(墨東公安委員会・たんび両氏はサポートという立場ではあるが)。そして今回の会合は、もちろんアンミラ駒沢公園店の死を看取るという大きな目的こそあるものの、隠れた目的は去る9月26日に電撃的に発表されたプロ野球巨人の原辰徳監督辞任に対する対応を計るためなのであった。「原辰徳前監督」が現実のこととなってしまった今、我々は何と名乗ればよいのか……それについては来るコミックマーケット65(申込済)で明らかになるだろう。本稿ではあえてこの話題には深入りしないことにする。

 さて、問題のアンミラ駒沢公園店である。遠路はるばるやって来た我々を出迎えたのは、閉店当日にも関わらずいつものような爽やかな笑顔で席を案内してくれるウェイトレスさんであった。所用で遅れる猫一号氏を除いた我々4人は、後でもう一人来る旨を伝えると、店の奥の8人用の席へと案内された。オーダーを取りにきたのは見慣れたピンク色の制服を身を包んだやや大柄なウェイトレスさん。そのはっきりとした目鼻立ちと小さからぬ胸に敬意を表して、ここでは小池栄子似のウェイトレスさんと表記することにする。その小池さんに各自がオーダーを伝える。真っ昼間であるが雰囲気はさながら「最後の晩餐」といった感じである。ちなみに筆者は奮発してフルーツクリームパイとコーヒーを注文した(筆者の貧困なる経済事情からしてみればアンミラでパイとコーヒーを同時に注文することすらささやかな贅沢なのである)。
 一服して店内を改めて見渡してみる。遅いランチ時にしては客の入りはよく、ウェイトレスさんたちは休む暇がない。この客のうちどれくらいがこの店が今日で閉店だと知って来ているのであろう、と思った。そういえば、アンミラに行くと必ずと言っていい程の頻度で遭遇する「同業者」の姿が見えない。我々より奥の席で独りぼっそりとパイを食べている青年が強いて言えばそうなのだろうか。ますます今日が最後の日だとは思えなくなってくる。
 我々の隣りの席に外国人の一団が席を決めた。アンミラで外国人の客を見かけることは稀ではない。以前広尾店を訪れた際には隣りに何人とも分からない外国人の集団を見た(おそらくイラン人ではないかと思われたが)ことがあった。やはりそこはブッシュ大統領もお手上げの(?)アメリカン・ホームメイドスタイルであろうか。聞き慣れぬ外国語すらアンミラの店内では心地良い音楽となって聞こえるのである。
 そうこうしているとお待ちかねのパイがやってきた。幸いこの日はどこの国でも革命・政変の類が無かったらしく、各自が注文したパイが綺麗にテーブルに並ぶ。これらを持ってきたのは先程の小池さんとは別のオレンジの制服のウェイトレスさん。この方も細身の割に豊かな胸をお持ちで、読者諸兄も御存知の通りこの制服が体のラインを強調するのでこれが堪らない。この方はイニシャルを取ってKさんと呼ぶことにしよう。そんなわけなので、筆者はKさんがお水やコーヒーのおかわりを注いでくれる度に表には出さねど内心は狂喜乱舞していたのである。そして思うのだ。「ああ、アンミラってやっぱり素晴らしい!」と。
 読者諸兄の中には「巨乳は虚乳なり」として巨乳ウェイトレスを嫌う向きもあろうと思うが、流石は天下のアンミラ、その辺は心得ているらしく3人目のウェイトレスさんは貧乳、いや言葉が失礼だ、微乳である。
 なんか風俗誌のレポート記事のようになってきたので話の方向を変えよう。アンミラの閉店は今年に入って3月の目黒店、8月の二子玉川店の閉店に次いで3店目である。ここ数年の閉店ラッシュにより一時は20数店を数えた店舗も今や半分以下。まさに「アンミラ冬の時代」の到来である。是非民主党には「3年後までにアンミラ10店新規開店」なる条項をマニフェストに付加して頂きたいものである。もはやアンミラの危機は対岸の火事ではないのだから。

 楽しい時はあっという間に過ぎる。パイとウェイトレスさんの艶姿を肴にコーヒーを7杯がぶ飲みすると(カフェインの摂り過ぎは体によくありません)、時計は既に5時を指していた。この後渋谷でヘリトンボ氏と落ち合う予定があるので長居はできない。我々は文字通り後ろ髪を引かれる思いでここを後にすることにした。会計をスタンプカードを持っている渡辺氏に一任して、我々は店を外から名残惜しく眺めることにした。その時である。外にはテラス席があるのだが、そのテラス席の常連客らしい人とKさんが何やら話込んでいるのだ。聞き耳を立ててみると、なにやら、
客「(アンミラが)閉店したらこの後どうするの?」
Kさん「アンミラはもうやめて、他の飲食業にする」
などと話しているではないか。なんとKさんはアンミラを辞めてしまうとのこと。なんと勿体ない話ではないか。Kさんほどの優れたウェイトレスをアンミラは手放してしまうのか。不況の折余剰人員はカットされる宿命にあるのだろうが、それにしても悲しい話である。そして我々は泣く泣く店を後にした。

 見よ今や諸君ハアンミラ閉店の元凶総理小泉侯、アンミラ閉店の元凶財相塩川侯の忠実なる政友として、汝アンミラ駒沢公園店の死を視る路人の如く、吾人ハ独り赤坂・広尾の孤塁に拠って尚ほアンミラ制服普及の為めに奮闘しつゝあることを。汝アンミラ駒沢公園店の死を弔し霊を祭るに方って、吾人豈に追昔撫今の情なきを得んや。(了)

(仙地面太郎さんからの寄稿です)


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